エッジ / ローカル推論エンジン(2026年8月)
極小のハードウェアで巨大モデルを動かすプロジェクト群。共通の手法:MoEのスパース性を活用——
小さな共有コアをRAMに常駐させ、ルーティングされたエキスパート重みを必要に応じてディスクから
ストリーミングする——モデル全体を量子化する代わりに。
パターン
MoEモデルはトークンごとのアクティブパラメータ数が小さく、大部分のエキスパートは遊休状態。
それらのエキスパートをSSD/NVMeからストリーミング(LRU/LFUキャッシュ付き)することで、数兆
パラメータモデルを消費者向けハードウェアのワークロードに変える。「ゼロ量子化、ゼロ蒸留」が
共通のうたい文句。
プロジェクト
- kimi-k3-in-c —
FareedKhan-dev/kimi-k3-in-c、Apache 2.0。176KBのC99バイナリが8.24GB RAMで Moonshot Kimi K3(2.78Tパラメータ)を実行。MXFP4パックされたエキスパートをNVMeからストリーミング、 16/896エキスパートがアクティブ、O_DIRECTトランクストリーミング、エキスパートLRUキャッシュ。 PyTorch参照実装とバイト単位で同一。 - TurboFieldfare —
drumih/turbo-fieldfare、Apache 2.0。Swift+Metalエンジンが~2GB RAM (Apple Silicon)でGemma 4 26B-A4Bを実行。~1.35GBの共有コア常駐、レイヤーごとの16スロット LFUエキスパートキャッシュ。 - Ling-3.0-tiny —
inclusionAI/Ling-3.0-tiny(Ant Group Bailing)、MIT。7.9B MoE(1.3Bアクティブ)、 KDA:MLA 3:1ハイブリッドアテンション、128エキスパート。M4 Pro MacBookで~90 tok/s、<100msファーストトークン。 - Muse Glimmer —
meta-models/Muse-Glimmer-30B(Meta)、Apache 2.0。Muse Spark 1.2から蒸留した 30B、~17GB 4-bit量子化、RTX 5090でDFlash投機的デコーディングにより233 tok/s。 - Needle 2 —
cactus-compute/needle(Cactus Compute)、Apache 2.0。45Mパラメータ → 14MB C++ バイナリ。MLP層なし(Walsh-Hadamard変換)、ハッシュ化n-gramテーブル。Raspberry Pi 5で500–800 tok/s。 Pebble Index 01スマートリングに搭載。 - h3.c —
antirez/h3-metal、MIT。Apple SiliconでMiniMax H3オムニモーダルを動かすC/ObjC + Metal エンジン。safetensorsからのmmapロード、--ssd-streamingがDiTメモリを36.5→2.0 GiBに削減。
メモリ管理の比較
「MoEスパース性」という共通ラベルの下に、実は2つの異なる戦略が隠れている。分けて考える価値が
ある——最適化している制約が違い、失敗の仕方も違う。
A. ストリーミング + キャッシュ(kimi-k3-in-c、TurboFieldfare、h3.cの--ssd-streaming)——
共有コアを常駐させ、ルーティングされたエキスパートを必要に応じてSSD/NVMeからストリーミングし、
ホットなエキスパートをキャッシュする。エキスパートがいくつあってもメモリフットプリントは
平坦なまま。コストは、ルーティング変更後の最初のトークンでのキャッシュミス。
- kimi-k3-in-c — 最大規模(2.78T → 8.24GB RAM)。エキスパートLRUキャッシュ、
O_DIRECTトランクストリーミング、16/896エキスパートがアクティブ。PyTorch参照実装とバイト単位で同一、 というのが際立つ主張。 - TurboFieldfare — 最小フットプリント(~2GB)。レイヤーごとの16スロットLFUキャッシュ、 ~1.35GBの共有コア常駐。LFU(LRUではない)を使うのは、アクティブエキスパート集合が小さく、 レイヤーごとにホットだから。
- h3.c — 汎用メカニズムをフラグ(
--ssd-streaming)として公開し、LLMだけでなくDiT (拡散)スタックにも適用——このトリックがモダリティ非依存であることを証明。
B. アクティブ集合を縮める(Ling-3.0-tiny)——トークンごとのアクティブフットプリントを
十分小さくし(7.9B中の1.3B、KDA:MLA 3:1ハイブリッドアテンション)、全体をRAMに収める。
ディスクストリーミングは一切行わない。総パラメータ数ではなく、レイテンシと決定的なファースト
トークン時間(<100ms)を最適化。
再利用可能な洞察: エンジン選択は規模(Aは任意の数のエキスパートをストリーミングできるが
キャッシュミスのコストを払う)とレイテンシ(BはミスしないがRAMに収まる量に上限がある)の
トレードオフ。キャッシュポリシー(LRU vs LFU、レイヤーごと vs グローバル)がA戦略エンジン同士を
分ける調整可能なノブ。この2戦略が融合するかどうか——より大きなハードウェアでオーバーフローした
エキスパートもストリーミングする「小さい常駐コア」モデル——に注目。